御嶽という名前
〜「御嶽」の二文字を辿って〜
千葉県山武市に「御嶽(みたけ)神社」という神社がある。
御嶽神社(千葉県山武市)
最初に気になったのは森でも社殿でもなかった。
「御嶽」という字だった。
沖縄には御嶽(うたき)と呼ばれる祈りの場所がある。
自分はこれまで沖縄各地の御嶽を巡り、与那国島では一族が守る御嶽にも足を運んできた。
だから地図の上で「御嶽神社」という文字を見つけた時、思わず目が止まった。
与那国島にある一族の御嶽
そもそも沖縄の御嶽(うたき)とは何だろうかの説明を少ししておきたい。
沖縄の御嶽(うたき)とは、沖縄や奄美地方に伝わる琉球神道の聖地であり、神々や祖霊が宿るとされる祈りの場所である。
御嶽(うたき)は人工的な建造物ではなく、巨岩やイベ石と呼ばれる小岩だったり、ガジュマル(樹木)、泉や洞窟などの自然そのものが神域とされてきた。
首里金城町の大アカギ
内金城御嶽(ウチカナグスクノウタキ)
そこでは古くから、五穀豊穣や航海安全、子孫繁栄など、人々の暮らしと結びついた祈りが捧げられてきた。
もちろん山武市の御嶽(みたけ)神社と沖縄の御嶽(うたき)に直接の関係がある訳ではない。
それでも同じ「御嶽」という字に惹かれ、自分はこの場所を訪ねてみた。
境内へ足を踏み入れると、まず目に入ったのは深い森だった。
高く伸びる木々。
落ち葉に覆われた参道。
木漏れ日が差し込む静かな空間。
歩いていると、どこか沖縄の御嶽(うたき)を思い出す。
御嶽神社(千葉県山武市)
もちろん風景は違う、生えている木も違う。
それでも森の中に入った時の空気感に、どこか共通するものを感じた。
そんな中、一つの石に目が止まった。
御嶽神社にあった石
何か特別な説明がある訳ではない。
ただ、その石はそこにあった。
なぜそこにあるのかは分からない。
それでも、その石を見た時、自分は沖縄で見てきた御嶽(うたき)の風景を思い出していた。
御嶽(うたき)では、石や木そのものが祈りの対象になる事がある。
人が作ったものではなく、そこにある自然そのものに手を合わせる。
そんな感覚が、この石からも伝わってくるような気がした。
そしてもう一つ、不思議だったのが椰子の木だった。
境内には椰子の木が何本も立っていた。
沖縄では珍しくない風景である。
しかし、千葉県山武市の森の中にある神社で見ると不思議な気持ちになる。
なぜここに椰子の木があるのだろうかと。
理由は分からない。
けれど、「御嶽」という名前に惹かれて訪れた自分には、その風景が妙に印象に残った。
千葉と沖縄は遠く離れている。
歴史も文化も違う。
それでも人は森に入り、石に手を合わせ、自然の中に祈りの場所を見つけてきた。
山武市の御嶽(みたけ)神社で見た森と石と椰子の木は、そんな事を静かに思い出させてくれた。
旅をしていると時々こういう事がある。
何かを探していた訳ではないのに、一つの名前に惹かれて足を運ぶ。
そして気付けば、その場所が自分の記憶と繋がっている。
今回、自分をここ御嶽(みたけ)神社へ連れて来たのは神社そのものではなく、「御嶽」という二文字だったのかもしれない。
それは沖縄で見てきた御嶽(うたき)の記憶であり、もっと遠い昔、先人達が自然の中に見つけた祈りの記憶だったのかもしれない。












